「西郷愛」を地域と共有する伝統校

“西郷愛”溢れる人たちとの繋がりで、地域全体で子どもを育てる小田倉小学校の取り組み/西郷村立小田倉小学校 関根隆校長先生

「西郷村立小田倉小学校」の関根隆校長先生
「西郷村立小田倉小学校」の関根隆校長先生

日光国立公園や那須連山など大自然に囲まれた場所でありながら、都心からのアクセスは良好で、日本で唯一、新幹線の駅がある村としても有名な福島県西郷村。
村の保育施設や小中学校、教育機関が連携し、地域全体で子どもの成長を支えるなど、親子が安心して暮らせる環境が整っています。

「地域全体で子育てをするという考え方のもと、教育を行っている。」そう話してくれたのは、西郷村立小田倉小学校の関根隆校長先生。小田倉小学校の教育方針や取り組み、地域との関わりなどについてお話しを伺いました。

子どもたちが「より良い自分」になるために、友達との支え合いを大切にする小田倉小学校

「西郷村立小田倉小学校」の校舎
「西郷村立小田倉小学校」の校舎

——まずは小田倉小学校の概要や歴史についてお聞かせください。

関根校長:創立は1875(明治8)年12月12日で、2025(令和7)年度で創立150年を迎えます。西郷村には小学校が5つありますが、そのうち4校が今年で創立150年になります。

——教育目標「よりよい自分に向かって、互いに支え合い、高め合う子ども」に込められた想いを教えてください。

関根校長:この教育目標は、昨年度新しく変更したものです。西郷村では「自立と共生」を教育の基本理念としており、自らを高め、共によりよく生きる人づくりを掲げています。それを受けて小田倉小学校では、「よりよい自分に向かって、互いに支え合い、高め合う子どもの育成」としました。

長い歴史のある小学校
長い歴史のある小学校

——実際に日々どのようなことを指導されているのでしょうか。

関根校長:子どもたちには自分を客観的に見て、今の自分に満足することなく、より良い自分になるんだという意識を持ってもらうようにしています。根気強く努力をして成長してほしいと。それを毎日積み上げていき、なりたい自分に何度も出会っていき、どんどん成長してほしいというのが一番の願いです。

ただ、それは個々の努力では叶わないこともあります。その時に必要なのが友達です。一緒に頑張る、励ましあう、時には教え合うなど、友達との関わりの中で、より良い自分に向かっていくのが支え合いです。考えを伝え合うことで、お互いをより高め合うことができます。そんな願いを込めて作った教育目標です。

——具体的にはどのような手法を用いていますか。

関根校長:この教育目標を、子どもたちは朝の会で毎日唱えています。それもあり教育目標をきちんと言える子が多いと思います。教育目標については常に繰り返し話しているので、子どもたちはそれを意識しながら生活や学習していると思います。

教育目標に基づく小田倉小学校ならではの取り組み

豊かな自然の中で育まれる抜群の環境
豊かな自然の中で育まれる抜群の環境

——小田倉小学校ならではの特徴的な授業などがあれば教えてください。

関根校長:本校は13年前から筑波大学附属小学校の初等教育研究会に入会して、ここが小田倉支部となっています。先生方は皆、初等教育研究会の会員でとなっていて、筑波大学附属小学校から授業の指導を受けています。1年おきに研究実践発表会を実施、本年度で8回目となります。

——研究実践発表会とはどのような内容ですか。

関根校長:研究のテーマとしては「一人ひとりが意欲的に学び、高め合う授業はどうあればよいか」を主題とし、それに合わせて「関わり合いの中で、わかった!できた!を実感できる授業作り」を具体的にしていきます。子どもと教材の関わり、自分自身との関わり、子ども同士の関わりという3つの関わりを持ちながら学習をしていくことによって、主体的で対話的な深い学びにつながるようになります。国語と算数を中心に授業の中で子どもたちと関わりを大事に、先生が一つ発言したら、子どもが答える。その答えに他の子どもが反応して発言する、そのようにどんどん繋がっていく、そのような授業を目指しています。

——それでは授業中子どもたちは発言が多く、賑やかな感じなのでしょうか。

関根校長:そうですね。毎時間それを中心にすると時間がなくなってしまいますので、単元という数時間のくくりの中で計画的に実施しています。さらに3年生から6年生の総合的な学習の時間では、4年間をかけてストーリー性のある学習を組んでいます。

小田倉小学校の授業風景
小田倉小学校の授業風景

——具体的にはどのような授業内容でしょうか。

関根校長:3年生が「発見!ふるさとの商業施設とSDGsの取組」と題し、社会科の学習と絡めて、スーパーマーケットのSDGsを学習しています。どんなSDGsに関する取り組みを行っているかを学習し、自分では何ができるのかを考えるものです。4年生では「発見!ふるさとの自然と水、世界の水問題とSDGs」と題して、西郷村のイメージキャラクター「ニシゴーヌ」から西郷村の素晴らしさを学ぶ。5年生では「発見!ふるさとの発展の歴史、西郷村のよさとSDGs」という活動を行うなど、3年間をかけて西郷村の良さを知るための学習を行います。

——自分の暮らすまちを知る授業内容なのですね。

関根校長:そうですね。この学びで得たことを6年生の修学旅行では、旅先の日光で「西郷村に来てください」とパンフレットを配布する活動も予定しています。さらに6年生のテーマは「ふるさとの村づくりとSDGs~村長さんに提案しよう~」です。村長さんに話を聞き、将来の西郷村を考えて提案するという内容で、持続可能な西郷村を考えていくという取り組みを行っています。

まず、「西郷愛」を持つということが一番大切なのではと思っています。地域の方々に畑の世話をしてもらったり、昔遊びなどを教わったりと色々お世話になっている中で、子どもたちとしてどのように西郷村に貢献できるかを考える機会を作っていきたいと考えています。

休み時間に遊んで体力づくり、全力で取り組む子どもたち

休み時間に全力で遊ぶ元気な子どもたち
休み時間に全力で遊ぶ元気な子どもたち

——本日伺っての印象ですが、子どもたちは元気に挨拶してくれました。休み時間もみんな元気に遊んでいますね。

関根校長:当校では体力向上タイムの中休み、昼休みと2つの休み時間があります。それぞれ15分、20分と短い時間ですが、全校生が校庭に出て全力で遊んでいます。大谷翔平選手が全国の小学校へ寄贈したグローブも、本校では飾るのではなく実際に使用しているので、もうかなり使い込まれていますね(笑)。

水、木曜日はお掃除の時間をなくして35分と、長く遊べる時間にしています。木曜日は仲良しタイムとして、クラスで話し合って何をして遊ぶかを決めます。これは学級作りや人間関係作りに有効です。

——休み時間の使い方も教育理念に繋がっているのですね。

関根校長:そうですね。支え合うことなど人間関係の土台を作っていくということを、遊びを通して実行できていると思います。

校庭にあるたくさんの遊具
校庭にあるたくさんの遊具

——吹奏楽や合唱などの特設クラブやスポーツに関する活動など、課外活動にも力を入れられていますね。具体的なお取組み内容や児童のみなさんの成長につながったエピソードなどがあれば教えてください。

関根校長:子どもたちの成長といえば、挨拶が素晴らしいと思うんです。特に特設活動をしている子どもたちには、一番大事なことは結果ではなく心なんだと教えています。挨拶をすること、感謝をすること、諦めないで一生懸命努力すること。このようなことを先生と子どもたちと共有しながら進めており、礼儀正しく、コツコツと努力する姿が見えています。

努力が身を結び、時には県大会や全国大会に出場するという結果が叶うこともあります。それを讃えながらも、結果が出たから良い、出なければダメということではなく、もし結果が伴わなくてもいいんだよと。そういうことに取り組めていることが幸せなんだよということを話しています。

地域全体で関わり合い育てていく、小田倉小学校の楽しい授業

対話を大切にした授業をおこなう
対話を大切にした授業をおこなう

——今年の入学式での校長先生から新入生へのお約束として、「西郷村をもっともっと好きになること」との言葉があったとお聞きしました。地域との結びつきも強いことが伺えますが、地域とともに取り組んでいる活動などについて教えてください。

関根校長:低学年の1年生の生活科では「昔あそび」を実施しています。これは地域のお年寄りの方に来ていただき、めんこ、けん玉、おはじき、あやとり、竹馬などを教えてもらい一緒に遊びます。子どもたちも大変楽しそうにしていますし、地域のお年寄りの方にも喜んでいいただいています。子どもたちにとってはおじいちゃんやおばあちゃん、地域の方にとっては孫のような世代との交流を通じて、お互いに元気をもらっている感じです。

——それは素敵な取り組みですね。

関根校長:また、学校近くの畑ではさつまいもを育てています。5年生の総合の授業の中で、名産品であるじゃがいもを栽培・収穫して料理を作るという取り組みがあり、地域の方にはその畑のお世話をしてもらうほか、ポテトまんじゅう作りを教わったりもします。また家庭科の授業にも、多くの地域の方に来ていただいています。調理実習やお裁縫など、個別に見てもらうことが上達への近道だと思うので、大変助かっています。それから「子どもの安全見守り隊」というのがあり、現在では25名の方が、登下校中の安全を見てくれています。

地域のお年寄りに昔あそびを習う
地域のお年寄りに昔あそびを習う

——進学先である西郷第二中学校と合同の学校運営協議会を設置され、「9年間の育ち」との視点で教育活動を行っていますね。中学校と一緒に行う取組みなどがあれば教えてください。

関根校長:学校の協議会は一緒になってやっているので、小中学の経営ビジョンについて見てもらい、承認と助言をいただいております。それから小学校の教育理念で考えて話せる子どもの育成を行っていますので、中学校に進学してもそれは接続、継続していこうと話しています。また先月、吹奏楽部では、中学校と合同練習を行いました。東京などと違って講師の人材確保がなかなか難しいこともあるなか、中学生が小学生に教えてくれる、それで上手になって中学でもさらに活躍できる。そんな仕組みづくりを大切にしたいと思っています。

5年生のさつまいもの収穫の様子
5年生のさつまいもの収穫の様子

——学校ブログでも児童のみなさんの日常が伝わって印象的ですね。こちらも詳細を教えてください。

関根校長:できるだけ頻繁に更新するようにしていますが、行事などでできないこともありまして、週2、3回でしょうか。今の子どもたちがどのような生活をしているか、何を頑張っているかを発信しています。
例えば5年生は、那須甲子青少年自然の家での4泊5日のセカンドスクールで、通常の授業に加え、自然学習を取り入れた学習を実施しています。先生は授業が終わると帰りますので、あとはボランティアの学生さんと一緒に過ごすわけです。学生さんはなんでもやってくれるわけではないので、自分の身の回りのことや洗濯、掃除などは自分たちでやらなければならず、考えながら生活を送ることで成長していきます。セカンドスクールの間は家庭への連絡はできないこともあり、保護者の方々からもっと子どもたちの様子をいっぱい載せてほしいとの要望もいただいていますね。

——通われている児童のみなさんや保護者の方にはどのような方が多いでしょうか。首都圏など、他のエリアから移住されてきたファミリーの方なども多いのでしょうか。

関根校長:やはりもともとこちらにいる人の割合が多いのですが、インターチェンジや新幹線の停車駅ということもあって、西郷村に移住される方も結構多いです。本校にも毎年転校生も入ってきます。なかには西郷村で新居を建てられる方もたくさんいらっしゃいます。このエリアには世界的な大企業も複数あるので、親御さんの仕事の関係で越して来られる家族もいます。転入は珍しくなく、中には外国人のお子さんもいらっしゃいます。

西郷村の住環境とおすすめのスポットは?

西郷村で生まれ、西郷村育ちの関根校長先生
西郷村で生まれ、西郷村育ちの関根校長先生

——学校から見た西郷村の住環境や、おすすめスポットを教えてください。

関根校長:西郷村の素晴らしいところは、「子ども真ん中社会」ということを村長がよく話していて、子育てに関する政策が充実しています。例えば、入学祝い金、給食の無償化、保育料の無償化、教育関係の予算増加などがあり、教育にとても力を注いでいます。西郷村で子育てをしようと思って来られる方にとっては、子育しやすい環境だと思います。

——子育ての環境が整っていますね。住環境はどうでしょうか。

関根校長:自然環境面でも西側には那須連山があって、阿武隈川の源流があり、雄滝雌滝という有名な源流の滝があります。日光国立公園の自然の素晴らしさを味わうことができます。それから甲子温泉などもあり温泉も楽しめます。そこには水芭蕉がたくさん咲きまして、そのような自然環境も素晴らしいと思います。栃木県と西郷村はちょうど県境なのですが、那須連山に茶臼岳があって、ここはもう何十回と行っています。だいたい3時間くらいで往復できて頂上からの眺めが素晴らしいです。

——西郷村への移住を検討されているファミリーの方々へ、メッセージをお願いいたします。

関根校長:先ほどもお話ししましたが、西郷村は、入学祝い金、給食の無償化、保育料の無償化、教育関係の予算増加があるなど、教育にとても力を注いでいます。制度はもちろん、西郷村には豊かな自然と住みやすい環境があります。また新幹線の駅、高速のインターチェンジもあり、たくさんの大企業もあります。地方自治体の地方交付税不交付団体でもあり、健全な財政です。そのような素晴らしい村だと思いますので、ぜひ私たちと一緒に西郷村に住んでいただきたいなと思います。

“西郷愛”溢れる人たちとの繋がりで、地域全体で子どもを育てる福島県・西郷村の取り組みとは
“西郷愛”溢れる人たちとの繋がりで、地域全体で子どもを育てる福島県・西郷村の取り組みとは

西郷村立小田倉小学校

校長 関根隆先生
所在地:福島県西白河郡西郷村小田倉原中189
電話番号:0248-25-2353
FAX:0248-48-1033
URL:https://nishigo.fcs.ed.jp/odakura-es/
※この情報は2025(令和7)年4月時点のものです。